2013年03月22日

悪魔のアントニオ!

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左からペレ・ダ・ボンバ(78)、アントニオ・ジアボ(80)、フィデラゥン(77)、アンジェロ・ホマノ(70)



 とうとう会うことができました。メストリ・アントニオ・ジアボ(Mestre António Diabo)。カンジキーニャの古い弟子で、メストリ・ブラジリアやパウロ・ドス・アンジョスよりも先輩にあたる人物です。現在80歳。

 ジアボというのは「悪魔」という意味で、数々の所業からそういうあだ名がついたようですが、今はエヴァンジェリコ(厳格なキリスト教の一派)に改宗して、自らアントニオ・ジ・デウス(神様のアントニオ)と名乗っています(笑)。

 教えてもらった住所を訪ねて行きたかったのですが、どうしても特定することができず、ABCA(ブラジル・カポエイラ・アンゴラ協会)での待ち合わせとなりました。

 「ジアボ、悪魔と言われるくらいなんだから、どんな悪漢なんだろう」とイメージが膨らみすぎていて、実際に会ってみるとあまりの普通さに少々拍子抜けしてしまいました。

 しかし昔の話を聞いているとすさまじさの片鱗は確かに感じられました。警察が撃った7発のうち5発を受けたとか、その時の傷がこれだと、シャツをまくり上げて見せてくれました。「それでも死ななかったんですね?」というと「神様も来てほしくなかったんだろう」とにやりと笑いました。

 

 もともとメストリ・アントニオは、レスリング、ボクシングを経て、カポエイラを始めたそうです。レスリングは、バイーアを代表する格闘家で、グレーシー柔術との対戦でも有名なヴァウデマール・サンタナのところで練習したとのこと。実はヴァウデマール・サンタナ自身もカポエイリスタで、メストリ・パスチーニャの本『カポエイラ・アンゴラ』にもその名が登場します。

 メストリ・アントニオのことは、メストリ・ブラジリアからも聞いていましたし、メストリ・ペレもカンジキーニャのショーで一緒に出演していた仲間です。さらに先日の記事にも書いたように、友人のブリットさんの先生でもある人です。

 まるでパズルの欠けていたピースが埋まったような、オセロの一打で、縦横斜めがさぁーっと色が変わっていくような、今回の出会いはこれまでの知識とのそういう連鎖反応を感じました。



 長話の最後に聞いてみました。

 「メストリは今日でもカポエイラはするんですか?」

 「もちろんするさ。でもホーダには行っていない」

 「どうしてですか?」

 「最近のホーダはとても乱暴になっている。やられたら、やり返さないわけにはいかないから、行かないんだ」

 アントニオ・ジ・“デウス”らしからぬ、穏やかでない発言に怪訝な顔をしていると、こう言いました。

 「エヴァンジェリコでは、右のほほを打たれたら左のほほを出せという。しかし神様はまだそれをわしに教えていない。あるいは、まだわしが学べていないんだ」

 と、中身はまだジアボの片鱗を残しているメストリでした。
 




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 夜はメストリ・ヘネのACANNEのホーダへ。

 その後、ヴァジアソン・メンバーでサルヴァドールに来ているマリア・フマッサと夕食を食べました。







posted by kubohara at 23:17| Comment(0) | カポエイラ探検隊
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